改正高齢者住まい法  後編

・・・前回からの続きです。

サービス付高齢者向け住宅の賃貸借契約について

賃貸借契約については、以下の点について留意ください。

1、書面で専用部分(部屋の号数など)が明示されていること。

2、賃貸契約が、長期入院等を理由に、事業者から一方的に解約できない等居住の安定がはかられている内容となっていること。

3、敷金、家賃、サービスの対価のみを受領するものであって、権利金や更新料などを受け取る契約ではないこと。

4、家賃、サービス対価の前払金を受領する場合
  前払金の算定の基礎
  返還債務の金額の算定方法
  が明示されていること。

入居後3か月以内に契約終了した場合、(契約解除までの日数×日割り計算した家賃等)を除き、前払金を返還しなければなりません。

その返還義務について、必要な保全措置がとられていることも必要です。

この前払い金は、建物の完成後でないと入居者からもらうことはできません。

以上のような契約の留意点があります。

これらの留意点を満たさないと、サービス付高齢者向け住宅としての都道府県における登録ができないことになります。

また、入居者も契約書を読む際には、これらの留意点を確認しておく必要があるといえるでしょう。

なお、入居者としては、以上のことのほかに

1、見守りサービス、家事援助サービスなどの介護サービスを行う事業者からの、サービス内容について、重要事項説明書の交付があり、きちんと説明がされているか。

2、契約書の中で、緊急時対応(主治医への連絡方法など)の記載があるのか。

3、退去時の原状回復について、法外な金額を要求されることがないか。

などの確認も必要です。

介護サービスを行う事業者が、住宅の供給事業者とは異なる場合があります。

どんな会社がどのような責任をもって介護サービスを行うのか、しっかりと確認しておいたほうがよいでしょう。

「サービス付高齢者向け住宅」は、制度自体が始まったばかりで、管轄省庁は厚生労働省と国土交通省にまたがっています。

これを機に不動産業界から介護業界に進出する事業者や、介護業界から不動産管理業界に進出する事業者が多くありますが、不慣れなビジネスに四苦八苦しているところも見受けられます。

できれば最初は、不動産管理部分はその専門業者が行い、介護サービス部分はその専門業者が行う、というように、専門の事業者同士が協力しあう形で事業を行うほうがいいかと思います。

そこでお互いにそのノウハウを十分に学習したのちに2つ目、3つ目のサービス付高齢者向け住宅を作る際に、すべてを自社で行うビジネスを構築していけばいいのではないでしょうか。

制度の趣旨は、高齢者の安定した住まいの供給にあるので、不慣れな事業者が参入することにより、結局事業計画の見直しをせざるを得なくなったために、高齢者にとって不安定な住まいの状況になってしまうことのないようにお願いしたいと思います。

国からの補助金について

サービス付高齢者住宅として登録されると、国土交通省の「高齢者居住安定化推進事業」の一環として、補助金支給の対象となります。

補助金内容は以下のとおり

1、住宅部分  新築の場合:建築費の1/10 (上限 100万円/戸)
          改修の場合:改修費の1/3  (上限 100万円/戸)

2、高齢者生活支援部分(デイサービスや訪問介護事業所など介護サービス事業部分)
          新築の場合:建築費の1/10 (上限 1000万円/事業)
          改修の場合:改修費の1/3  (上限 1000万円/事業)


税制優遇について

上記の補助金を受けた場合に限り、税制の優遇も受けることが可能です。

1、所得税、法人税
    5年間 割増償却 40%(耐用年数35年未満の場合28%)
          床面積25㎡以上(専用部分のみで)  戸数要件:10戸以上

2、固定資産税
    5年間税額2/3軽減
          床面積30㎡以上(共用部分含む)    戸数要件:5戸以上

3、不動産取得税
    家屋:課税標準kら1200万円控除/戸
    土地:家屋の床面積の2倍にあたる土地面積相当分の価額を軽減
          床面積30㎡以上(共用部分も含む)  戸数要件5戸以上


なお、補助金の事業ですが、本来H24年11月末で応募締切でしたが、H25年2月末までに締切が延長されました。
もし、サービス付高齢者向け住宅をお考えの場合は、まずは都道府県の健康福祉部か、都市整備局に問い合わせてみてくださいますようお願いいたします。